新しいタイプの商標の保護制度⑤—位置商標
本記事は前回の記事『新しいタイプの商標の保護制度④—音商標』の続きです。前回の記事では、「新しいタイプの商標の保護制度」の5タイプのうち、タイプ④音商標についてご紹介しました。本記事は、タイプ⑤「位置」商標をご紹介したいと思います。
新しいタイプの商標の出願・登録状況:
タイプ⑤:位置商標
位置商標とは、文字、図形、記号、立体的形状やこれらの結合、これらと色彩との結合からなる標章を付す位置を特定する商標を指します。簡単に言うと、文字や図形を商品等に付す位置を特定するものが位置商標です。
一つの例を挙げると、左図は人気ブランド「コンバース(Converse)」のスニーカーです。ご覧の通り、履物の側面の後方に付される「CONVERSE」、「Chuck Taylor」、「ALL STAR」の欧文字、星形の図形及び「R」の欧文字を円で囲んだ図形が表された円形の部分は、「コンバース(Converse)」のスニーカーの象徴的なマークとして知られています。実は、こちらのマークは、すでに位置商標として商標登録しました。
このように、位置商標は商品の外観に表れるもので、商品デザインに絡んでくる場合がほとんどです。産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会が位置商標に対し、「取引において需要者が視認できる場所に標章を配置することを継続して行うことで,需要者はそれを単なる装飾ではなく,商品役務を識別する標識であると認識できるようになることが位置商標の本質と考える。」と評価しました。
今まで商品に付けられたあるマーク、文字等が、単に商品デザインの一部として捉えましたが、位置商標の登場によって、商品に付けられたあるマーク、文字等も保護されるものになります。
位置商標の商標出願方法:
動き商標を出願する時、実物を特許庁に提示するのができないため、願書に位置商標の構成及びその商標を付する商品等における位置(部位の名称等)についての具体的かつ明確な説明することがポイントです。
また、商標を付する位置を図面等により特定するものであるところ、図面との関係からは想定できない商品を指定商品としていた場合(例えば、ズボンとしか見えない図面をもって後ろポケット脇のピスネームを位置商標として特定しているにもかかわらず、指定商品に「履物」を含んでいるようなケース)、商標の詳細な説明が不明確であったり出願商標と不一致の場合や、出願商標の構成文字等に起因して指定商品との関係で品質誤認を生じるおそれがある場合については、商標権の効力範囲を明確にして無用な紛争を防止する観点から、登録を拒絶されるので、出願する前に確認した方が無難でしょう。
位置商標の審査基準:
原則として、類似する場合(指定商品第28類「動物のぬいぐるみ」)
位置商標間の類否について、商標に自他商品・役務(サービス)の識別機能が認められない場合には、商品に付される位置等によって需要者及び取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察しなければなりません。
原則として、類似する場合
位置商標間の類否について、商標に自他商品・役務の識別機能が認められる場合には、商標が他人の登録商標と同一又は類似であれば、その商標を付する位置が異なる場合でも、原則として、商標全体として類似だと見なされます。また、位置商標と図形商標等との類否について、位置商標を構成する商標が要部として抽出される場合、位置商標が他人の登録した文字・図形等の商標と同一又は類似すると、原則として商標全体として類似だと推定します。
今後の課題:
今回の法改正では、音や色等の新しいタイプの商標を国内に導入しました。ビジネスのグローバル化やインターネットの普及に応じて、商品やサービスの販売戦略が多様化し、それに伴って企業のマークや商品・サービスのネーミングである「商標」も多様に変化します。そのため、国際的な動向や我が国の企業などのニーズを踏まえて、「におい」や「味」等、今後に新たな保護対象を追加するか否かの判断を課題として、時間をかけて検討する必要があると考えられます。
参考文献:
特許庁「新しいタイプの商標に関する審査基準の概要」
(https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/newtype/document/new_shouhyou_video/01.pdf)
森 寿夫,本多 敬子,木村 達矢,岡田 充浩,小林 克行『「ホログラム商標」「位置商標」の審査動向』パテント73巻2号67頁~81頁(2020年)
(https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3493)
宮永 栄「位置商標の保護」パテント68巻4号29頁~39頁(2015年)
(https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201504/jpaapatent201504_029-039.pdf)
情報提供源
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