パロディ商標①

皆さんは有名な芸術作品『モナリザ』のパロディ作品を見たことありませんか?モナリザに口ひげやあごひげを描き加えたりするなど、面白いですよね。では、「パロディ商標」なら聞いたことがありますか?これは、他者の商標を模倣し、更にユーモア、皮肉、著名な商品を想起させる等を加味して作り替えられた商標を指します。今回は有名なパロディ商標をご紹介したいと思います。

上記の例を見ますと、「これ商標権侵害じゃん!」と思ってしまう方はいませんか?確かに、一部のパロディ商標は商標権侵害で訴えられました。一方、商標権を取得したパロディ商標も存在し、実際に使用されているパロディ商標もあります。

とは言え、どのような商標は登録できる、どのような商標は登録できないのでしょう。実は、通常商標が登録できるかどうかについて、特許庁は「商標審査基準」といった判断基準に沿って、出願された商標に対して審査を行います。ここで、日本においてパロディ商標に関する明文の規定は定められていないため、パロディ商標登録の可否もこの「商標審査基準」に基づいて審査されます。

一般的には、商標パロディの登録の可否に適用する条文について、①混同のおそれがある商標(商標法4条第1項15号)②公序良俗に反する商標(同項7号)③類似商標(同項 10・11・19号)、三つのタイプに分けられます。下記はタイプ①混同のおそれがある商標とタイプ②公序良俗に反する商標を説明します。

タイプ① 混同を生ずるおそれのある(商標法4条第1項第15号)

4条第1項第15号:他人の商品・役務(サービス)と混同を生ずるおそれのある商標

混同を生ずるおそれのある商標とは、商品・役務(サービス)の出所が同一であると誤認されることを指します。本条文の趣旨は出所の混同を生ずるおそれがある商標を登録から排除することを目的とし、一般に広く知られている他人の著名商標と類似して紛らわしい商標であると、該当する商標は登録できないということです。

例えば、上記の図1は著名なファッションブラント「ポロ ラルフ ローレン」のロゴであり、図2とはそのパロディ商標です。外観から見ますと、両者の図形も黒色を基調として構成され、疾駆する馬に乗っている人の姿を見えます。したがって、全体としての印象が非常に似ています。更に、両者も「洋服」という分野において商標を使用するため、需要者に両者の商品を誤認する、若しくは両者の間に相関関係があると誤解する可能性が高いです。

実際、知財高裁3は「両図形を時と所を異にして離隔的に観察した場合は,全体の外観印象において,彼此相紛らわしいものといわなければならない。本願商標の指定商品は引用商標が使用されている「洋服」等の商品を含むものであるから,本願商標をその指定商品に使用した場合は,これに接する取引者,需要者は,ラルフ・ローレンと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所を誤認するおそれがある。したがって本願商標は商標法4条1項15号の規定に該当し,登録を受けることができない。」という判断を下しました。

このような需要者に「どっちがどっちなのか分からない」と思われる商標は本条文で登録を拒絶されます。当然、「ポロ ラルフ ローレン」を模倣したパロディ商標も商標登録できませんでした。

タイプ② 公序良俗に反する(商標法4条第1項第7号)

4条第1項第7号:公序良俗に反する商標

公序良俗に反する商標とは、社会の一般的秩序・社会の一般的道徳観念を害する商標です。例を挙げますと、商標自体がきょう激、卑わい、差別的なもの、他人に不快な印象を与えるようなものや、他の法律によって使用が禁止されている商標、国際信義に反するなどの商標を指します。

例えば、上記の図1が著名なスポーツ用品ブランド「PUMA」のことは皆さんきっとご存知でしょう。「PUMA」は多国籍企業として全球においても広く知られ、同じ洋服界隈の図2商標「KUMA」の出願人も「PUMA」の存在を知らない可能性は極めて低いだろう。しかし、「PUMA」の存在を知った上でパロディ商標「KUMA」を作り上げた行為に対して、知財高裁4は「意図的に引用商標と略同様の態様による4個の欧文字を用い,引用商標のピューマの図形を熊の図形に置き換え,全体として引用商標に酷似した構成態様にすることにより,本件商標に接する取引者,需要者に引用商標を連想,想起せしめ,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受けたものといわざるを得ない。」と判断し、「公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものというべきである」という理由でパロディ商標「KUMA」の登録を認めませんでした。

参考文献

1「五輪エンブレムがコロナ 組織委、風刺画の取り下げ要求」、『朝日新聞デジタル』2020年5月19日

https://www.asahi.com/articles/ASN5M5GKLN5MUTIL03T.html

2平澤卓人「商標パロディと商標法4条1項7号及び15号」知的財産法政策学研究Vol.44 283頁~334頁(2014)

(https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/55095/1/44_07.pdf)

3知財高判平成19年1月31日(平成18年(行ケ)第10099号)〔ポロ競技者の図〕

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/078/034078_hanrei.pdf

4知財高判平成 25年6月27日(平成24年(行ケ)第10454号)〔KUmA事件〕

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/381/083381_hanrei.pdf

上野達弘「著名商標のパロディ」パテント72巻4号(別冊21号)67頁~82頁(2019年)

https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3341

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