パロディ商標②

本記事は前回の記事「パロディ商標①」の続きです。前回の記事では、有名なパロディ商標をご紹介し、「商標審査基準」における商標パロディの登録の可否に適用する条文、タイプ①混同のおそれがある商標(商標法4条第1項第15号)、タイプ②公序良俗に反する商標(同項7号)を説明しました。本記事残りの適用条文、タイプ③類似商標(同項 10・11・19号)をご紹介したいと思います。

タイプ③類似商標(商標法4条第1項第10号・11・19号)

4条第1項第10号:他人の周知商標と類似する商標

他人の周知商標とは、商標登録していないが、全国的に認識されている商標、若しくはある一地方で広く認識されている商標を指します。本条文の趣旨は、未登録周知商標を保護する観点から、未登録であっても需要者間に広く認識されていた周知商標であれば、他者への使用の差止等を認めないまでも、その信用に只乗りするだけの他人の商標登録を排除するべきということです。本条文を適用するか否かについて、まず保護すべき未登録商標が周知であるか否かを判断した上で、出願商標が当該する周知商標と類似しているかどうかを判断します。もっとも、ある商標がパロディの対象となること自体、当該商標は周知性を有していると想定できるので、一般的に、パロディ商標であれば本条文に適用します。

4条第1項第11号:先願に係る他人の登録商標

先願に係る他人の登録商標とは、他人が先に権利を取得した商標を指します。本条文の趣旨は、商品・役務(サービス)の出所に混同が生じないように、他人が先に登録した商標と類似すると、該当する商標は登録できないということです。それは、登録商標と出願商標の指定商品若しくは指定役務が異なる場合、出所混同の恐れがなければ問題はありませんが、他人の登録商標に係る指定商品若しくは指定役務が一致する場合、登録商標と出願商標が類似すると、出所に混同が生じる可能性があります。それを防ぐため、出願商標が登録商標と類似しているかどうかを判断するに、原則として商標の外観(見た目)、称呼(呼び方)、観念(意味合い)の3つの要素から総合的に評価されます。

例えば、上記の外国の高級腕時計ブランド「フランク ミュラー」(図1)とパロディ商標「フランク三浦」(図2)は、両者が類似するか否かについて知財高裁判決と特許庁審決の結論が異なります。知財高裁と特許庁は,特に「観念」(意味合い)の評価に関して相違があるようです。特許庁は、商標「フランク三浦」は著名ブランドとしての「フランク ミュラー」の観念を想起させる場合があることから,著名ブランドとしての『フランク ミュラー』の観念を生じることとして、観念上類似とするという判断を下されました。それに対し、知財高裁は、商標「フランク三浦」の「三浦」部分が日本語の印象が強く、外国の高級ブランド「フランク ミュラー」との観念において差異が大きい」という判断を下しました。

結局のところ、パロディ商標「フランク三浦」と外国の高級腕時計ブランド「フランク ミュラー」は、称呼(呼び方)において類似であるものの、外観(見た目)、観念(意味)において異なるため、商標全体としてみて類似していないと判断され、需要者に商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがないことで、パロディ商標「フランク三浦」の商標登録を認められました。

4条第1項第19号:不正の目的をもって使用する他人の周知商標と類似する商標

不正の目的とは、不正な図利的目的、他人への加害目的を持つことや、その他の取引則上の信義に反する行為を指します。本条文の趣旨は、一定の周知性を有している商標を不正の目的をもって使用するものを登録から排除することを目的とし、日本又は外国で一般に広く知られている他人の周知商標と類似して紛らわしい商標を不正の目的で使用する商標は商標登録できないということです。また、「不正の目的」をもって使用する商標は登録出願及び登録商標を排除することが趣旨であるため、「不正の目的」があることが明らかである場合、比較的周知性が低いと思われる商標の場合であっても審判においてはその商標の周知性は認められます。

例えば、上記の図2の商品については図1の商品を模倣し、更に先回りして商標登録したものです。それに対し、知財高裁1は「被告商品を表示するものとして需要者の間に周知著名であることを十分に認識しながら,被告から原告商品の販売が被告の商標権及び著作権を侵害し,不正競争に当たる旨の警告を受けた際に,引用商標が未だ商標登録されていないことに乗じ,被告との交渉を有利に進め,あるいは対抗手段を確保することを意図して,本件商標の登録出願を行い,しかも,現に本件商標の商標権に基づいて被告商品に対する輸入差止申立てを行っていることが認められるから,原告による本件商標の登録出願は,被告による被告商品の営業活動に支障を生じさせることを目的とするものというべきである。そうすると,本件商標は,原告が不正の目的をもって使用をするものと認められる。」と指摘しました。当然、最後に図2の商標登録も登録無効と判示しました。

このように、登録できるとできないものがありますので、パロディ商標は必ずしも商標権侵害とは言い切れないです。しかし、パロディ商標はブランドの知名度を借りて注目されるやすい一方、商標権侵害と判断される可能性が高いので、商標を創る際に自分のアイデアで創作したほうがお勧めします。

参考文献

1知財高判平成 30 年 7 月 25 日(平成 30 年(行ケ)第 10004 号)〔ポール・ヘニングセン PH5 事件〕

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/907/087907_hanrei.pdf

上野達弘「著名商標のパロディ」パテント72巻4号(別冊21号)67頁~82頁(2019年)

https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3341

上野達弘「悪意の商標出願」パテント73巻15号(別冊25号)17頁~46頁(2020年)

https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3696

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